| 「グローカル天理」巻頭言集 井上昭夫
第一巻 11号
人間・生命と地球の共進化と「元の理」
生命と地球の共進化を証明するために、全地球史解読プログラムという学際的研究のシンポジウム報告が月刊『地球』(1995/7)の特集で紹介されている。太古代における岩石や化石の系統的分析をもとに、地球システム全体の変動進化史と、それをもたらした地球多圏の相互作用の解読を通して、岐阜大学の川上紳一助教授らは、生命と地球の表層環境とが共進化してきたとの認識を得るに至ったという。
この生命と地球の共進化という地球史の先端科学的解読は、人間の成長と自然環境の変化が相照応していることを示す「元の理」のはなしと類似している点できわめて興味深い。だからといって、勿論、この生命と地球の共進化仮説をもって、「元の理」の正当性を主張しようとするも
のではない。
しかし、20世紀の人類の先端科学技術による新しい発見と知恵は、「元の理」の説く真実の世界に確実に接近しているように思われる。ミクロの領域に籠もる、DNAの整然とした二本のベルトの並びを、拡大して目の前に突きつけられると、それはとても偶然の産物とは考えられない。「元の理」を知るものであれば、夫婦のひながたとなった「ぎ」と「み」を即座に連想するであろうし、無数の「どじょう」は、地下、地上、海水、大気圏での生き物を支える微生物を連想させる。
ふつう一人の人間に共生する微生物は、1.5キログラムといわれるが、微生物を一枚の10円銅貨の厚さに見立てると、その積み上げた高さは2兆光年の長さとなり、宇宙からはみ出てしまう。「元の理」の「たくさん」ということばで示される無数とは、究極のところこういうことなのである。
さらに「元の理」においては、この世の始まりは泥の海であったとある。泥海を混沌(カオス)と解せば、そのカオスから、虫鳥畜類に、そして人間へと、自然を取り持つ秩序(コスモス)が、親神の守護のもとに順序を通して現れる。この宇宙も混沌と秩序のバランスと進化の上に成り立っている。
マクロの宇宙もミクロの人間の脳も同じである。松下正明東京大学医学部教授によれば、人間というのは、脳のなかにある混沌の世界なしには存在し得ないという。喜怒哀楽の感情、おそれや怒りなどの情動、敵に対する防御反応や呼吸・循環・消化・血圧などの自律神経機能、さらには摂食、体温維持、性行動などに加えて、これらの機能が果たされるために必要な記憶などは、内臓脳と呼ばれる大脳辺縁系の混沌が取り持つ、種族保存のための必須のはたらきであるとされる。
人間の心、つまり、知性、判断、言語、認知などの機能は、コスモスとしての脳の新皮質の役割であるが、それに対して、中間・原始・古皮質を形成するのが大脳辺縁系である。つまり、知識(コスモス)の前提である、生命を維持する機能は、混沌(カオス)をなす大脳辺縁系によって支えられている。神のからだとしての人間の身体・かしものが、DNAのコスモスと脳のカオスに支えられている事実は、驚嘆にあたいするが、神から与えられた人間の心が、カオスを元にして知識を積み重ね、知恵を創りあげ、調和あるコスモスの世界に至るということは、これまた、一人ひとりが因縁というカオスを元にして成人することに似て、ここにおいても、人間の心の進化と生命・地球の共進化は、その原型において相照応していることに気づくのである。そこには驚くべき共時性が見られる。 |