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「グローカル天理」巻頭言集 井上昭夫

第一巻 3号
私立大学存続の危機と天理大学

 私立大学をめぐって、激しい環境変化が起っている。本年の速報によれば、都心にある私立大学を除き、特に地方に位置する私立大学は、なべて志願者数が激減している。前年度と比べると、学部や学科によっては7割減という危機的な大学も見られる。志願者数の減少は少子化だけが原因ではない。少子化が進む中でも、志願者が増加している地方の私立大学もある。志願者が激減する地方の大学と、増加する同じ地方の大学の違いは、一体何処にあるのかという点を厳しく見極めることは、それが大学存立の本質に触れているが故に教訓的だと思われる。その実態を的確に把握し、大学の施設や組織構造の中身を支える教育・研究の独自的・質的内容において、それを自学の実情に照らし、厳しい自己批判と評価を行い、学ぶことが大切だろう。

 そのためには、例えば研究成果の「publish or perish」(出版せざれば滅ぶ)というアメ リカにおける大学教員評価の通念を導入することも求められる。また、地域性や時代性に即応しない学部・学科のスクラップ・アンド・ビルドは、志願者の大学選択において、就職実績重視の大学評価が行われる現在、思い切って実践されなければならない。 ソフトの貧弱な大学は、如何に建学の精神の言葉や施設が立派であっても、志願者増加を期待できないのは当然である。

 平成10年の大学審議会は「21世紀の大学像と今後の改革方策について」という長文の答申において、「競争的環境の中で個性が輝く大学」というサブタイトルを掲げている。つまり、「大学の個性」を大学存続の為の改革の基本理念に置いているのである。独自性なかりせば、生涯教育の受容や、入試方法の改革などは、本質的な問題ではない。まず私学に求められる個性あるヴィジョンを打ち出し、教育・研究の不断の改善を追求することが、長期的効果を実現するについて大切であると言うのである。

 法政大学は改革方策として「開かれた法政21」、早稲田大学は「グローカル・ユニバーシティ」というヴィジョンを掲げ、大学としての特徴を打ち出している。そのヴィジョンに基づいて、例えば前者は独自のプランを立て、プログラム化(政策化)し、具体的な事業(プロジェクト)を行っている。そのキーコンセプトとして「グローバル化への対応」、「社会との交流」、「生涯教育の推進」の三つを掲げている(清成忠男『21世紀の私立大学像』)。

 橋本武人天理大学学長は、2月16日の臨時教職員会議において、入試志願者の激減という結果を踏まえ、天理大学は2004年には全入時代に入るという危機感を述べ、学校法人天理大学の山田忠一理事 長が設置した諮問機関・大学運営審議会の下に、急遽学内における改革のための委員会を発足するこ とを発表した。山田理事長は、私学の置かれている現在の状況を、生き残りをかけた「戦国時代」と いう厳しいことばで表現している。生存競争の時代は去り、私学は生存戦争の時代に突入したという認識である。この認識に立てば、生存への勝利を目指して、全員戦士という真剣味が関係者個々人に求められる。また勝れた戦略の構築と、その敏速なる広報を通して、学内戦士の意気投合が必須となる。

 戦う意志と力のないものは、戦場において邪魔になる存在であるから、退去してもらうしかない。この真剣な戦いの経営原則は、企業も大学も変わりはない。大学崩壊・倒産を乗り越えるためには、小心翼々としている時ではない。

 
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