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「グローカル天理」巻頭言集 井上昭夫
2002年8月号
天理エコモデル・デザイニングセンターの実験
おやさと研究所では、杣之内町に天理エコモデル・デザイニングセンターなるものを立ち上げた。太陽熱、水力、風力、地熱(「火水風土」)といった自然エネルギー利用のモデル実験や、いま世界で注目されているエコロジカルなアースバッグ(土嚢)によるシェルター建築、ビオトープの造成などを通して環境問題を総合的に学ぼうというわけである。センターはわが国最古の道である山辺の道がすぐ東側を走る歴史風土にめぐまれた場所に位置している。西方に隣接して以前合掌造りの家が二棟保存されていたが、いまは台湾より移築されたパイワン族の首長の石造りの家のみが残っている。そこに建てられたシェルター2棟の方位と内部構成には、京都大学で博士号を取り、京都CDL(コミュニティ・デザインリーグ)の運営委員長を勤める俊英建築デザイナー渡辺菊真氏によって、聖俗の象徴的表現がほどこされ、それを取り囲んでいる壁面は南側につづくビオトープの存在を意識して設計されている。
またセンターの北東の隅には、シェルターに隣接して井戸が掘られ、その沸き水は風力やソーラー発電から得られた電力で汲み上げられて、ビオトープに流される。水路には、泥土を固めて造られたコーブ(cob)状の素材を用いた独自の彫刻を考案中である。ゼロエミッションのモデルとして屡々広範囲に利用される自然素材・竹の造形的デザインもセンター構成の美的視野に入っている。陶芸用の窯も造る。自然建築の主流である土嚢工法によって造られたこのシェルター建築には、アメリカより自然建築を世界各地で実践しているNGO・国境なき建築家機構(Builders
With-out Borders)の代表ジョウ・ケネディ氏が来日して天理と神戸で技術指導を行った。
天理大学地域文化研究センターは、このおやさと研究所が進める、自然・大地に還る天理「火水風土」プロジェクトの地域版として、地震被災地である神戸市長田区庄田町の一画を市から借地し、同じく地震被災地であるアフガニスタン救援を意識した、「神戸アフガニスタン友好交流公園」のためのアースバッグによる建築を行った。作業は5月初旬から7月7日までの毎日曜日に、日本インド国交復興50周年を記念し、センターの理念の国際的実現を目指して本年度インドに派遣される天理大学学生や、地元のNGOなどが協力した。その主旨や経過は新聞でも紹介されてきたが、テレビでは朝日放送が7月7日に現地取材とインタビューを行い、7月9日「ニュースゆう」という番組において解説を含めて放映した。
アメリカで開発されたアースバッグ工法は、明治の左官職人・服部長七が開発した土と消石灰を水で練り、たたいて締める「人造石工法」に似ているところがある。長七が開発した工法は「長七たたき」とも呼ばれるが、世界遺産・アンコールワットの遺跡修復でも、強度はセメントの4倍といわれる常温で固めた「人造石工法」が、同遺跡の石造寺院バイヨンの修復を受け持つ日本政府アンコール遺跡救済チームによって採用されている(『朝日新聞』1998年7月10日)。
経済効率を追い求める現代の生産活動の世界に、忘れ去られていた伝統工法が見事に復活したのである。センターの床面も長七の「人造石工法」で叩き上げ、わが土嚢工法が世界の被災地でよろこばれるよう、製作に向けて、ふやけがちな精神をたたき締め上げていきたいと考えている。
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