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「グローカル天理」巻頭言集 井上昭夫
2002年9月号
農地を潤すチェックダム─水源確保インド報告
『National
Geographic』9月号は「世界の水不足」をテーマに地球環境特集を組んだ。南アフリカのヨハネスブルグで開幕した「環境・開発サミット」を意識しての特集である。洪水と干ばつといった両極端の気候変動をもたらす地球温暖化の原因と実体をさまざまな視点から検証し、問題解決に向けて地道に努力している人たちの活動も紹介している。
世界人口の約8割はアフリカをはじめとする途上国に生活している。しかし、その所得は世界の2割を占めるに過ぎない。一方水不足は貧困層の拡大をもたらしている。その原因は温暖化だけではなく、先進国主導の経済のグローバル化にもある。そこでヨハネスブルグ会議最大の焦点は、水やエネルギーの安定した供給を通して、20億人といわれる貧困・飢餓に喘ぐ人々をいかに環境保全に添った施策で解決するかであった。
幸い日本では国内の水は足りている。しかし、世界では水質汚染や水不足が深刻である。そこで水不足の深刻さを実感し、水のありがたさを学ぶためにも、天理大学地域文化研究センターは昨年からの「国際参加」インド・プロジェクトを引き継ぎ実行する。昨年の夏、インドのグジャラート州ジャムナガール市の地震被災地において、学生と現地のNGOの協働で20mほどのチェックダム(堰)を完成した。先月その現場を調査するために訪れた。モンスーンであるにも関わらず今年は雨が降らず、チェックダムが昨年雨水を堰き止めて出来た広大な貯水池は完全に干上がっていたが、周辺の土地は見事に緑の畑となり農作物がゆたかに育っていた。
バラチャディ村では、私たちが協働してつくった堰を始めとして、同規模のチェックダムが7基完成している。天理教国際たすけあいネットやベルギーのNGOなどの寄付によって造られたものである。それぞれの堰に隣接する土地には、深さ8mから50mあまりの井戸があちこちに掘られている。地下水をポンプで汲み上げ散水するのである。雨が十分に降れば貯水池にたまった水を生活用水や家畜、そして潅漑に利用できるだけではなく、貯水池の底から地面に深く染みこんだ水が干上がった井戸を再び満たすようになる。この水の恩恵を受けて地平線の遙か彼方までピーナッツや胡麻、綿花、粟、稗などの畑が続いていた。加えてうれしいことに、今年もボランティアとして出かけた天理大学生有志のアースバッグによるボンガの建築作業に協力した農民たちが、同じようなシェルターを収穫用の倉庫として造りたいと言いはじめたことである。
バラチャディ村でダムを管理しているV.P.デブバさんの話によれば、雨水の95%が近くのアラビヤ海に流れてしまうと言う。それを堰き止めるために小型ダムをつくることは私たちの経験から言っても技術的にさして難しい事ではない。20m級のダムなら50万円余りで出来上がる。急激な人口増加による食糧需要が増え、世界はさらに貧困層を拡大していくであろう。農地用水のため潅漑が無制限におこなわれれば、河川や湿地や湖沼が今以上に干上がる恐れがある。そこで大地を潤すには天から授けられる膨大な雨水を、より効率的に活用することが大切だ。灼熱の広大なあの天竺の農地に立って、このようなことを考えていると「またゝすけりうけ一れつどこまでも いつもほふさくをしゑたいから」(ふ12:96)と仰せられるお言葉が思い起こされた。来年度のインド・プロジェクトの継続・拡大が期待される。
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