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「グローカル天理」巻頭言集 井上昭夫


2003年11月号
天理・カブール大学共同研究事業に向けて

 天理大学おやさと研究所は、「伝道史料室」に加えて、数年前から大学の再改革運動の主旨に向けて、「天理自然・人間環境学」「天理ジェンダー・女性学」「天理総合人間学」「天理スポーツ・オリンピック」「天理国連・平和学」の5研究室を発足した。それらの調査研究活動の独自の業績は、本年研究所設立60周年記念の事業の一つとして9月に実施された「回廊ギャラリー展」をもって紹介された。そして10月「天理国連・平和学」研究室は、本年度の活動の一つであるアフガニスタンでの「国際化」「他者への貢献」プロジェクトの一環として、その可能性を調査・推進する目的で、研究室の担当である筆者がカブールを訪問した。

 筆者がアフガニスタンに関わるのは、1979年ソ連軍のアフガン侵攻後、NGOアフガン難民救済同志会なるものを立ち上げ、約20トンの毛布や古着、医薬品などをペシャワールの難民村に届けたのが最初であった。そのときの同志である天理・憩の家病院に胸部外科医として勤務していた京大医学部卒のアフガン人カレッド・レシャード医師は、現在静岡県でクリニックを開院するかたわら、NPO「カレーズの会」を昨年立ち上げ、出身地カンダハールにおいて医療支援をいま活発に行っている。

 今回カブールには10月12日から10日間滞在した。その第一の目的は、本学の地域文化研究センターの調査研究活動と連動して、復興途上にあるアフガニスタンに関する映画をカブール大学と共同製作する可能性の検討であった。そのためにファルーク・ファリアッド芸術学部長をはじめ、ジュリア・アフィフィ演劇学科長やカブール大学フセイン・ザダ文化評議委員会議長などと撮影に関する基本的な問題点を2日間にわたって検討し、おおむねわれわれの提案について賛同を得た。撮影に関する資金が日本側から可能であれば、出演者や撮影場所の選択、保安・警護、政府よりの撮影許可の入手などはカブール大学が責任をもって協力し、ビデオカメラ、照明機器など、現場での撮影に必要なプロについての経費は日本側が負担するということで、一応の条件付仮合意が口頭でなされた。前もって準備しておいた英訳シナリオ案も提示し、特にアフガンの文化的な表現について誤解がないかどうか大学側の助言や意見をもらうことになっている。

 カブール大学では、著名なアフガニスタンの映像作家でもある映画監督ムサ・ラドマニッシュ氏が講義するシネマトグラフィーの授業風景を参観させてもらい、教室で学生達と約1時間の質疑応答を行った。30数人の受講生の中、女子学生は1名に過ぎなかったが、彼女は女優志願・シナリオ作家希望と言い、他の男子学生は、ビデオやデジカメ、三脚など撮影機器の圧倒的に少ない学科の現状を嘆いていた。大学には編集用のパソコンもない。ただひとりBBCで7年間アルバイトをしていた学生が、旧式のビデオを1台もっているだけであった。アフガニスタン人によるアフガンからの映像発信の物理的条件が、他の支援領域と比較してはるかに援助が遅れていることはまことに残念である。外国人によるアフガン報道は、あくまでも外国人の目から見たアフガニスタンであって、時によってはアフガニスタン人からすれば慚愧にたえない一方的報道もあり、彼等にはそれに反論する機会が与えられていない。情報が相互に平等に流れるよう条件整備が急がれる。

 カンヌ映画祭において「オサマ」という作品で3つの賞を授与されたシディック・バルマック監督とは、アフガンフィルムという市街戦の弾痕が残ってはいるが立派な建物にある彼のスタジオで約1時間半のインタビューを行った。最初はダリ語で彼が語り、通訳がそれを英語に訳していたのだが、訳語が的確でないと判断したのか途中から彼は苦手だがと言い訳しながらも英語で喋りはじめた。時間は半減され、話はロシアでの5年間の映画大学留学時代の経験に及んで、黒澤明の作品批評までが飛び出した。後ほど表敬訪問した高等教育省大臣シャリフ・ファイズ博士は、その子息がアメリカの大学院で映像学科に籍をおいていることもあって、詩歌や写真も真実を伝える手段であるが、映像の伝達力はその先端科学技術の発達によりさらに力をましていると語った。そして本学とカブール大学との共同製作には喜んで協力したいという言葉をいただいた。

 今回も天理からマダケとモウソウ竹の4本の根を持参した。3月に持参した竹の根は7本芽を吹き出し、30cm程の高さに育っていた。カブール大学農学部は竹生長観察のため特別に構内に一角をもうけ、担当のアーマッド・コエスタニ教授は盛んに竹に関する英文資料をほしがっていた。
11月16日には国連ユニタール・フェローシップによる25名のアフガニスタン高官が本学を訪問した。一行の中にはカブール大学社会・哲学部のモハメッド・ハビビ教授がいたので、彼に英語文献をことづけ、来年はコエスタニ教授の来学を実現し、竹と土嚢を中心とした当研究所のエコ・モデルセンターにおける進行状況を見てもらうことを楽しみにしている。カブール大学と協力して将来アフガン各地での竹林造成を私たちは夢見ているからである。

 
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