| 「グローカル天理」巻頭言集 井上昭夫
2005年10月号
「アフガン全国演劇フォーラムズに参加して」
8月27日より1週間にわたってカブールで開かれた第2回アフガン全国演劇フォーラムズに出席した。戦争によって解体した舞台芸術活動の復活を目指すもので、ドイツ、フランス、米国、エストニア、タジキスタンなどの海外からの参加もあり、合計20余りの劇団がカブール大学の劇場や市内の学校、国立劇場などで公演を行った。大学の収容能力300名ほどの劇場は、戦乱で半壊していたのをドイツ政府が再建したものである。市街戦はカブール大学構内も巻き込んだ。ホール外壁の一部はまだ内戦の弾痕が生々しく残ったままである。カブールの国立劇場は天井や壁面が爆撃で吹き飛ばされたままであり、あたかも古代遺跡の劇場で鑑賞しているような錯覚をおぼえた。開会式にはS.ラヒーン文化情報大臣をはじめ、アフガン再建のため文化復興支援を行っている仏、独、英、米諸国の大使館文化担当官が出席した。15名もの来賓の挨拶が1時間半もつづき驚いたが、援助団体のバランスを取る為には仕方がなかったのであろう。日本大使館からの出席者は一人もなかった。壇上には私たちが贈呈した天理大学からの大きな花束が一つ飾られていた。カブールテレビがこれを大写しにしたらしい。この花はつづく劇団の役者によってその演技の度に何本か引き抜かれて使用されていたが、残された花は熱気のためかその日のプログラムの終りにはしおれてしまい、次の日には舞台から消えていた。
カブール亡命劇団はアメリカのボンドストリート劇団と共同で『鏡の向こう側』というアフガンの戦争史を映像や影絵も駆使して演じた。共同公演のリハーサルのため後者は3度もカブール大学を訪れている。ニューヨークで25年前に設立されたこの劇団はコソボやパレスティナといった紛争地の難民村を幾たびも慰問し、文化平和使節として数々の功績を残している。今年の春はブルガリアにおいて各国紛争地の亡命者が結成した劇団による国際演劇祭を主導し開催にこぎつけた。その思想は地域の文化はそこに居住する人たちのアイデンティティを支える精神基盤であるから、それなくしては国家や民族の独自性や真の復興はあり得ないという信念に透徹されていて、特に女性や子供達に笑いを取り戻す工夫をもこらし、演劇に際しては仮面を使用するのを特徴としている。国際交流基金はそこに目を付けASIA
MEETS ASIAという芸術祭にボンドストリートと亡命劇団を本年の10月東京に招聘することとなった。天理大学では創立80周年記念事業の一環として、東京公演に先立ち10月14日に天理市民会館でおひろめする事となっている。
亡命劇団を主宰するマムード・サリミ氏は、2004年の末天理大学がカブール大学と共同制作する『カブール・トライアングル』というドキュメンタリー映画の編集作業のため3週間天理に滞在した。その模様は本年1月4日のNHK
BS1による特別番組「きょうの世界」で15分間にわたり紹介された。この作品は11月26日、27日東京都大田区の池上会館で他の9作品とともに「アフガン映画祭」において封切られる。映画祭では8月に来学したセディック・バルマック監督の『ストレンジャー』も日本初公開される。バルマック監督は2003年のカンヌ国際映画祭でメラドール(新人監督)特別賞を受賞していて、『アフガン零年』は国際的な注目を浴びた作品として知られる。氏は来年の3月27日に開催される地域文化研究センター主催の天理大学創立80周年記念シンポジウムに参加する予定である。
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