| 「グローカル天理」巻頭言集 井上昭夫
2005年11月号
「同性結婚と憲法、そして宗教の立場」
The Boston Globe 紙の9月15日号は、同性結婚反対の憲法修正案をマサチューセッツ州議会が39票対157票で否決したことをトップ記事で報じている。04年の3月の議会では105票対92票で可決されていたのが、今回の投票で大きく逆転された。9月14日、たまたま筆者はボストンで州議会堂の前において行われた憲法修正案反対の同性愛者の抗議集会に出くわし、情報を当事者達からも聴取したので、カソリックの本山ヴァチカンをも揺るがすこの問題について感想を述べてみたい。全米で38州が同性結婚を禁じているが、マサチューセッツ州の今回の賛成の動きは全米に大きな影響を与えるとみられる。同性結婚の問題は人権問題や宗教の教理を巻き込んでますます複雑化している。
2004年5月マサチューセッツ州で、州レベルとしては全米で初めて同性結婚が合法的に認められて以来、現在まで少なくとも6,500組の同性結婚が成立しているといわれる。発端は、03年11月州当局が、同性結婚を禁じるのは州法違反と州最高裁が判断を下したことによる。この修正案は06年11月に予定される住民投票で可決しなければ成立しない。しかし、今回のマサチューセッツ州の逆転劇は住民投票にも影響を与えるだろう。西海岸では04年2月サンフランシスコ市が独自に同性カップルに結婚証明書を3,000組以上発行している。しかし、カリフォルニア州最高裁は同市に対して発行停止を命じた。ブッシュ大統領は合衆国憲法に「結婚は男女間によるものだ」と明記する修正条項を加えるべく連邦議会で審議中の憲法修正案を支持し、同性結婚反対の立場を表明している。
ボストンに本部のあるユニタリアン・ユニヴァーサリスト教会は、三位一体論やイエスの神性を否定する教派でハーバード大学神学部を中心として会衆派教会として発展した。アメリカ思想界では合理主義と人道主義の代表的系譜を形成し、現在は良心的兵役拒否、同性結婚にも積極的に取り組んでいる。同教国際宗教対話局長のオリヴィア・ホームズ女史によれば、最近同性愛者が同宗派に改宗する例が引きも切らないという。同教会本部には、ゲイやレスビアンの同性愛者に関する子供達の疑問に応えるパンフッレットや同性愛者が教会に来る事を歓迎するパンフレットが各種揃っており、その体験談も数多く掲載されている。一方、兵役と良心的拒否に関するパンフレットは在庫がなく再版中とか、信者の時局問題に対する関心の深さを物語っている。
カソリックは勿論同性結婚には反対の立場を取る。『ニューヨークタイムズ』9月15日号によれば、ヴァチカンは米国にある229の神学校に調査官を派遣し4,500人の学生に「ホモセクシュアルの証拠」調べを行っている。ゲイであるカソリックの神父は統計により異なるが、総数の10%から60%と言われ、はっきりとした数字は出ていない。しかし、ドナルド
B. コゼンズ前神学校総長の「司祭職はゲイ職であるかゲイ職に成りつつある」という発言を教会は受け入れざるを得ないだろうと言われている。一方、ヴァチカンからの圧力により『アメリカ』というジェスイット派雑誌の編集長を辞職したトーマス
J. リース師は、聖職者の減少により教会はゲイ神学生を退学させることはとても出来ないであろうと述べている。
天理教では地と天とをかたどって夫婦をこしらえたと教えられ、人間は全て隔てなく親神の子供であるとも教えられている。同性愛者も立派な市民であるから同性結婚は人権的、法律的にも認められるべきだとする主張との整合性をどのようにして持たせるかが問われている。
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